民謡「まつり花」

中国

 アルフー中国弦楽器げんがっきで,二胡にこばれることもあります。バイオリンと同じように弓で弦をこすることによって音を出します。しかし,この楽器には弦が2本しかなく,そのうえ弓の毛を弦と弦の間にはさんで音を出すことや,楽器を左ひざの上にのせ,立てて演奏えんそうすることなど,演奏の仕方はバイオリンとずいぶんちがいます。

アルフーは,中国では京劇きょうげき旋律せんりつを受け持つジンフー(京胡)とともに,「胡琴こきん」と呼ばれる民族楽器でしたが,今では,胡琴という場合にはふつうアルフーを指します。

独奏楽器どくそうがっきとしての演奏法は少しずつ工夫くふうされてきていて,すぐれた作品も生まれています。この工夫の取り組みの中では,バイオリンの奏法も参考にされたようです。

楽器の構造こうぞうですが,ニシキヘビというとても大きなヘビの皮をった木でできた共鳴胴きょうめいどう(音をひびかせて音量を大きくするためのもの)からさおがのびていて,大きさは1メートルに少し足りないくらいです。弓は,これとほぼ同じ長さのものが使われます。この弓の毛には,馬のしっぽの毛が使われています。

また,よく胡弓こきゅうという楽器にまちがえられますが,胡弓とは本来,日本の伝統でんとう楽器を指しますので,アルフー胡弓は,はっきりと区別する必要があります。

 

【参考曲】

・「二泉映月にせんえいげつ

「二泉映月」は,阿炳アービン(華
彦釣*)の作曲です。かれは31さいのときに,病気がもとで目が見えなくなりましたが,アルフーの演奏えんそうと作曲で人気を集めました。

曲名にある「二泉」とは,中国の東部,上海シャンハイ近くの無錫ウーシーにある天下第二泉という泉のことで,そのほとりは景色のたいへんすばらしいところです。その水面にうつった光りかがやく月に,人の心のすがすがしさや人生のはかなさを歌っています。

深く心にしみこんでくるような曲で,作曲者自身,よくこの泉のほとりでアルフーを演奏していたそうです。近年,世界的にも有名な指揮者,小澤征爾おざわ
せいじ
さんが,この曲を広く世界にしょうかいしました。

* …画面表示できないため,「華」の文字を使っていますので,異なる表記をする場合があります。


ピーパー(琵琶)は,しずくのような形をしたどうに4本のげんられていて,11〜18のフレット(弦をおさえる場所をしめすもの)をもつ中国の弦楽器です。この楽器の歴史れきしは古く,もとをたどると,2000年以上も前にペルシャ(西アジア)あたりから伝わったものともいわれています。日本にも琵琶びわという楽器として伝えられました。

ピーパー演奏えんそうには,右手の指に弦をはじくためのつめなどをつけて,ばちは使わずに5本の指を使います。日本の琵琶は形がていますが,演奏にばちを使いますので,それとはちがったひびきや音楽を味わうことができます。

 

 

【参考曲】

・「十面埋伏じゅうめんまいふく

この曲の題名は,昔の中国のという国における戦いの隊形に由来があります。この隊形は「十方向から待ちぶせをする」という意味をもっていて,そこにこうげきをしかける側にとっては,とてもせめにくいものです。紀元前200年ごろに,という国の軍がにせめ入ったのですが,の軍が使ったこの「十面埋伏」という強力な隊形にてこずり,ついには負けてしまったという歴史的な事実を表しているとされています。

戦いの様子を表現ひょうげんしたこの曲は,演奏えんそうするのに10分以上かかります。どちらかといえば,日本の楽器の琵琶びわよりも,三味線しゃみせんやこと(そう)によるはなやかなふんいきの演奏に近いものといえるでしょう。特に,演奏がむずかしい中後半にかけての部分になると,音楽や楽器のひびきはいっそうはなやかさをします。


民謡「まつり
 まつり花」は漢字で書くと,「茉莉花」と書きます。中国民謡みんようの一つです。日本で昔から「さくらさくら」が歌いつがれているのと同じように,中国で親しまれている歌で,花を愛する人々の心がよく表れています。

まつり花は,中国南東部の福建省ふっけんしょうが産地で,とても強いかおりの白い花をさかせます。「ジャスミン」ともばれ,この花のかおりを生かしてつくるジャスミン茶を飲む習慣しゅうかんが昔からあります。このごろでは日本でも,ジャスミン茶を飲むことができる機会がえました。

またこの曲には,花のかおりに包まれて気持ちがうっとりとしているだけではなく,自分にとってとても大切な人のことを思い,「その人と,この花の美しさやかおりをいっしょに味わえたらよいのに…」という思いもこめられています。

旋律せんりつに使われている音階が独特どくとくであり,そのため日本の音楽とは少しちがう感じを受けることでしょう。

また,題名は同じ「まつり花」でも,ちがう旋律の曲があります。

民謡「アリラン」

朝鮮半島

 | カヤグム | 民謡「アリラン」|

 カヤグムは,朝鮮半島ちょうせんはんとうに古くから伝わる12本のげんをもった横長の楽器です。日本のことそう)とよくた形をしていますが,ことつめを使って演奏えんそうするのに対して,カヤグムつめを使わず,右手の親指,人さし指,中指の3本の指を使って演奏します。指の先で弦をおさえて,それをはなすことで音を出すこともできます。左手で弦をゆらして音にゆれをつくることもできます。弦はきぬの糸でできていて,琴柱ことじによって音の高さを調節します。

とてもきれいな音色で,たとえるなら,こわれやすいかざり物のようです。大きな音を出すことができないため,現在げんざいでは多くの改良が試みられ,音がよくひびくように工夫くふうしたり,弦の本数をやしたりした楽器も現れてきています。

カヤグムには,それぞれの音楽の特徴とくちょうに合わせて,伝統でんとう音楽用民俗みんぞく音楽用の2種類があります。民俗音楽に使われるものは伝統音楽のものよりやや小さく,こちらが広く知られています。

カヤグム祖先そせんは,紀元前にはあったとされています。本などで調べてみると,新羅しらぎ(4世紀から10世紀にかけて朝鮮半島で栄えた国の名前)の時代に中国の箏をモデルに作られたという記録があります。現在でも独奏どくそう,器楽による重奏,そして歌や器楽の伴奏ばんそうなどで,人々に親しまれている楽器です。

 

【参考曲】

・「チンヤンジョ」

ゆるやかな速さで演奏えんそうされるこの曲は,カヤグムのみりょくを引き出しています。特に,ビブラートとばれる,びみょうな音のふるえはとても美しく,この楽器の重要な演奏手法の一つです。また,伴奏ばんそうには,チャンゴという砂時計すなどけいのような形のどうをもった両面太鼓りょうめんだいこが使われています。この楽器は,右手はばちで,左手は素手すででたたいて演奏します。

民謡「アリラン
「アリラン」は,朝鮮半島ちょうせんはんとうで人々に親しまれている民謡みんようの一つです。地方によって,いろいろな「アリラン」があって,数百種類にのぼるといわれています。「アリラン」という曲名は,かなり前から使われていたようですが,この言葉がどのように生まれたのかについて,くわしいことは分かっていません。

朝鮮半島の民族音楽は,3拍子さんびょうしがもとになっているものが多いようですが,この曲についても同じことがいえます。日本では2拍子がもとになっているものが多いので,ここに大きなちがいがあることが分かります。朝鮮半島は日本ときょりが近いため,昔から文化的にも交流がありました。それにもかかわらず,音楽の感じ方や表現ひょうげんの仕方に明らかなちがいがあるのです。

もともと朝鮮半島の音楽は,となりの中国のえいきょうを強く受けてきましたが,さらに西にある国々とのかかわりもあり,これらがともに受け入れられることで,独特どくとくな音楽文化をつくり上げてきたのでしょう。

世界の人々がこの「アリラン」を知るようになったのは,1920年代になってからです。アメリカ人の宣教師せんきょうしがしょうかいしたのがきっかけでした。

たくさんあるアリランの中で,ふつう「アリラン」といえば,「新アリラン(本調アリラン)」のことをいいます。教科書にものっている曲で最もなじみがあります。この曲も3拍子がもとになり,ゆったりとしていて音の上下の動きもあまりはげしいものではありません。旋律せんりつに使われている音は独特で,日本の音楽とはちがった気分が伝わってきます。

伴奏ばんそうには,カヤグムチャンゴ,竹でできた横笛テグムピリ(日本の雅楽ががくの楽器,篳篥ひちりきという楽器の仲間)が使われています。

 

モリンホール

モンゴル

| モリンホール | ホーミー |


モリンホールは,「馬頭琴ばとうきん」ともばれます。2本のげんをもっていて,弓を使って音を出す楽器です。「モリン」とは馬という意味で,台形の共鳴胴きょうめいどう(音をよくひびかせるための箱)からのびるさおの先には,馬の頭の形をしたほり物が付いています。

弦と弓には馬のしっぽの毛が使われています。また,弦の音の高低の並びは,バイオリンなどの弦楽器とは逆になっています。昔は,共鳴胴には,動物の皮がられていましたが,今はほとんどが木製もくせいになっているそうです。

モリンホールは,モンゴルの人々にとって特別な民族楽器で,独奏どくそう,合奏,歌の伴奏ばんそうなど,いろいろな場面で使われています。バイオリンと同じように弦をこすって音を出す楽器ですが,バイオリンのものとはちがう,どこかのどかで,人の声を思わせるようなしっとりとした音色が魅力的みりょくてきです。

この楽器は現在げんざい,「モンゴル国型」と「中国の内モンゴル自治区型」の2種類があって,楽器の形,弦の音を調節する方法,弦の材質ざいしつ,使う楽譜がくふにそれぞれちがいがあります。例えば,モンゴル国型では五線譜を使いますが,内モンゴル自治区型では,五線譜ではない楽譜をときどき使うようです。楽器のひき方はチェロのひき方とていて,共鳴胴をひざの間にはさんで,棹を立てて,右手で弓を使って演奏します。

 

【参考曲】

・「三頭の駿馬しゅんめ

「三頭の駿馬」は,オルドス(現在は中国の内モンゴル自治区の一部)地方の民謡みんようです。心にしみるようなゆたかで美しい旋律せんりつは,単純たんじゅんでありながら,それがよけいに演奏者えんそうしゃの心を伝えてくるかのようで,きいていると心が安らぎます。モリンホールの美しい音色を十分に味わえる曲です。

ちなみに,「駿馬」とは,足の速いすぐれた馬のことです。


ホーミー「人間が一度に出すことのできる声は一つだけ」という,みんながあたりまえのことと考えている常識じょうしきやぶるものが,モンゴルホーミーでしょう。このホーミーは,モンゴルの特定の部族の男性だんせいのみに伝えられる,特別な発声を使って歌われる民謡みんようや発声法のことを指しています。

もとになる声は,低い音域おんいきたもち続けながら発声されますが,よくきいていると,その上にまるで口笛のような高い音が同時に鳴りひびき,旋律せんりつをつくっています。そして,そのゆったりとした歌声や音色,ひびきが一つになって,きく人の心にしみこんできます。

ホーミーを歌うことはたいへんむずかしく,さらに体に大きな負担ふたんがかかるため,この歌い方をすることができる人は少ないといわれています。また,このことは女性や子どもにホーミー演奏者えんそうしゃが見られないことにもつながっています。

 

 

【参考曲】

・「故郷こきょう

この曲は,ヤンチン(楊琴)という楽器の伴奏ばんそうとともに演奏えんそうされます。ヤンチンは,台形の箱にった金属製きんぞくせいげんを,2本の細いぼうで打って演奏します。ホーミー独特どくとくのひびきとヤンチンの音色がみごとに合わさって,おおらかでありながら,どこかもの悲しげな味わいを感じることができます。特別なひびきをもった旋律せんりつからは,はるか遠くにある地平線を思わせるような広大な様子が感じられ,故郷を思う人々の心を伝えているかのようです。

メヘテルハーネ

トルコ

メヘテルハーネ
メヘテルハーネとは,トルコの軍楽隊ぐんがくたいのことです。軍楽隊とは,軍隊が行進するときなどに,ラッパや太鼓たいこなどで音楽を演奏えんそうする人たちのことをいいます。 
トルコの軍楽隊がいつごろから始まったものなのかは,よく分かっていませんが,大昔,遊牧民族であったトルコの人々が中央アジアで生活していたころではないかと考えられています。 
マルコ ポーロの「東方見聞録とうほうけんぶんろく」や7〜8世紀ごろの記録に,演奏の様子や楽器名が記されているものがあり,これらが数少ない手がかりです。小国からしだいに力をつけていったオスマン トルコが,1453年(このころ日本は室町時代で,まもなく応仁の乱おうにんのらん[1467]が起こり,戦国時代せんごくじだいへと入って行きます)にビザンツ帝国ていこく征服せいふくしてから軍楽隊の演奏もいっそうさかんになったようです。そして,15世紀後半〜16世紀には,このオスマン トルコの勢力せいりょくはますます広がって,その軍隊は地中海ちちゅうかい沿岸地域えんがんちいきや西アジアの一部,さらにはヨーロッパにまで進んだようです。この軍隊にとらえられた兵士が軍楽隊にも取りこまれたことが,後に軍楽隊が世界的に広まることにつながっているそうです。
軍楽隊に使われる楽器は,ボル(ラッパ),ズルナ(オーボエに似た楽器)といった管楽器,ダブル(両面の太鼓),ジル(シンバル),ナッカーラ(なべの形をした2つの小太鼓をつないだもの),キョス(ティンパニと似たもの),チャガーナ(すずや三日月のかざりが付いたつえ)といった打楽器です。このような楽器が,同じようなリズムをきざみ続けることで,独特どくとくなふんいきを生み出しています。 
歌が入るものと楽器だけのものがありますが,大きな特徴とくちょうとしてハーモニーがありません。一度きいたらわすれられないようなひびきをもっているこの音楽から受けたイメージをもとにして,モーツァルトやベートーベンは,「トルコ行進曲」とばれる曲をつくったといわれています。 
 
【参考曲】 
 ・「ジェッディン デデン」 
この曲名は「祖先そせんも祖父も」という意味で,日本ではテレビ番組のBGMやCMで使われたこともあります。

 

ホーミー

モンゴル

| モリンホール | ホーミー |


モリンホールは,「馬頭琴ばとうきん」ともばれます。2本のげんをもっていて,弓を使って音を出す楽器です。「モリン」とは馬という意味で,台形の共鳴胴きょうめいどう(音をよくひびかせるための箱)からのびるさおの先には,馬の頭の形をしたほり物が付いています。

弦と弓には馬のしっぽの毛が使われています。また,弦の音の高低の並びは,バイオリンなどの弦楽器とは逆になっています。昔は,共鳴胴には,動物の皮がられていましたが,今はほとんどが木製もくせいになっているそうです。

モリンホールは,モンゴルの人々にとって特別な民族楽器で,独奏どくそう,合奏,歌の伴奏ばんそうなど,いろいろな場面で使われています。バイオリンと同じように弦をこすって音を出す楽器ですが,バイオリンのものとはちがう,どこかのどかで,人の声を思わせるようなしっとりとした音色が魅力的みりょくてきです。

この楽器は現在げんざい,「モンゴル国型」と「中国の内モンゴル自治区型」の2種類があって,楽器の形,弦の音を調節する方法,弦の材質ざいしつ,使う楽譜がくふにそれぞれちがいがあります。例えば,モンゴル国型では五線譜を使いますが,内モンゴル自治区型では,五線譜ではない楽譜をときどき使うようです。楽器のひき方はチェロのひき方とていて,共鳴胴をひざの間にはさんで,棹を立てて,右手で弓を使って演奏します。

 

【参考曲】

・「三頭の駿馬しゅんめ

「三頭の駿馬」は,オルドス(現在は中国の内モンゴル自治区の一部)地方の民謡みんようです。心にしみるようなゆたかで美しい旋律せんりつは,単純たんじゅんでありながら,それがよけいに演奏者えんそうしゃの心を伝えてくるかのようで,きいていると心が安らぎます。モリンホールの美しい音色を十分に味わえる曲です。

ちなみに,「駿馬」とは,足の速いすぐれた馬のことです。


ホーミー「人間が一度に出すことのできる声は一つだけ」という,みんながあたりまえのことと考えている常識じょうしきやぶるものが,モンゴルホーミーでしょう。このホーミーは,モンゴルの特定の部族の男性だんせいのみに伝えられる,特別な発声を使って歌われる民謡みんようや発声法のことを指しています。

もとになる声は,低い音域おんいきたもち続けながら発声されますが,よくきいていると,その上にまるで口笛のような高い音が同時に鳴りひびき,旋律せんりつをつくっています。そして,そのゆったりとした歌声や音色,ひびきが一つになって,きく人の心にしみこんできます。

ホーミーを歌うことはたいへんむずかしく,さらに体に大きな負担ふたんがかかるため,この歌い方をすることができる人は少ないといわれています。また,このことは女性や子どもにホーミー演奏者えんそうしゃが見られないことにもつながっています。

 

 

【参考曲】

・「故郷こきょう

この曲は,ヤンチン(楊琴)という楽器の伴奏ばんそうとともに演奏えんそうされます。ヤンチンは,台形の箱にった金属製きんぞくせいげんを,2本の細いぼうで打って演奏します。ホーミー独特どくとくのひびきとヤンチンの音色がみごとに合わさって,おおらかでありながら,どこかもの悲しげな味わいを感じることができます。特別なひびきをもった旋律せんりつからは,はるか遠くにある地平線を思わせるような広大な様子が感じられ,故郷を思う人々の心を伝えているかのようです。

ピーパー

中国

 アルフー中国弦楽器げんがっきで,二胡にこばれることもあります。バイオリンと同じように弓で弦をこすることによって音を出します。しかし,この楽器には弦が2本しかなく,そのうえ弓の毛を弦と弦の間にはさんで音を出すことや,楽器を左ひざの上にのせ,立てて演奏えんそうすることなど,演奏の仕方はバイオリンとずいぶんちがいます。

アルフーは,中国では京劇きょうげき旋律せんりつを受け持つジンフー(京胡)とともに,「胡琴こきん」と呼ばれる民族楽器でしたが,今では,胡琴という場合にはふつうアルフーを指します。

独奏楽器どくそうがっきとしての演奏法は少しずつ工夫くふうされてきていて,すぐれた作品も生まれています。この工夫の取り組みの中では,バイオリンの奏法も参考にされたようです。

楽器の構造こうぞうですが,ニシキヘビというとても大きなヘビの皮をった木でできた共鳴胴きょうめいどう(音をひびかせて音量を大きくするためのもの)からさおがのびていて,大きさは1メートルに少し足りないくらいです。弓は,これとほぼ同じ長さのものが使われます。この弓の毛には,馬のしっぽの毛が使われています。

また,よく胡弓こきゅうという楽器にまちがえられますが,胡弓とは本来,日本の伝統でんとう楽器を指しますので,アルフー胡弓は,はっきりと区別する必要があります。

 

【参考曲】

・「二泉映月にせんえいげつ

「二泉映月」は,阿炳アービン(華
彦釣*)の作曲です。かれは31さいのときに,病気がもとで目が見えなくなりましたが,アルフーの演奏えんそうと作曲で人気を集めました。

曲名にある「二泉」とは,中国の東部,上海シャンハイ近くの無錫ウーシーにある天下第二泉という泉のことで,そのほとりは景色のたいへんすばらしいところです。その水面にうつった光りかがやく月に,人の心のすがすがしさや人生のはかなさを歌っています。

深く心にしみこんでくるような曲で,作曲者自身,よくこの泉のほとりでアルフーを演奏していたそうです。近年,世界的にも有名な指揮者,小澤征爾おざわ
せいじ
さんが,この曲を広く世界にしょうかいしました。

* …画面表示できないため,「華」の文字を使っていますので,異なる表記をする場合があります。


ピーパー(琵琶)は,しずくのような形をしたどうに4本のげんられていて,11〜18のフレット(弦をおさえる場所をしめすもの)をもつ中国の弦楽器です。この楽器の歴史れきしは古く,もとをたどると,2000年以上も前にペルシャ(西アジア)あたりから伝わったものともいわれています。日本にも琵琶びわという楽器として伝えられました。

ピーパー演奏えんそうには,右手の指に弦をはじくためのつめなどをつけて,ばちは使わずに5本の指を使います。日本の琵琶は形がていますが,演奏にばちを使いますので,それとはちがったひびきや音楽を味わうことができます。

 

 

【参考曲】

・「十面埋伏じゅうめんまいふく

この曲の題名は,昔の中国のという国における戦いの隊形に由来があります。この隊形は「十方向から待ちぶせをする」という意味をもっていて,そこにこうげきをしかける側にとっては,とてもせめにくいものです。紀元前200年ごろに,という国の軍がにせめ入ったのですが,の軍が使ったこの「十面埋伏」という強力な隊形にてこずり,ついには負けてしまったという歴史的な事実を表しているとされています。

戦いの様子を表現ひょうげんしたこの曲は,演奏えんそうするのに10分以上かかります。どちらかといえば,日本の楽器の琵琶びわよりも,三味線しゃみせんやこと(そう)によるはなやかなふんいきの演奏に近いものといえるでしょう。特に,演奏がむずかしい中後半にかけての部分になると,音楽や楽器のひびきはいっそうはなやかさをします。


民謡「まつり
 まつり花」は漢字で書くと,「茉莉花」と書きます。中国民謡みんようの一つです。日本で昔から「さくらさくら」が歌いつがれているのと同じように,中国で親しまれている歌で,花を愛する人々の心がよく表れています。

まつり花は,中国南東部の福建省ふっけんしょうが産地で,とても強いかおりの白い花をさかせます。「ジャスミン」ともばれ,この花のかおりを生かしてつくるジャスミン茶を飲む習慣しゅうかんが昔からあります。このごろでは日本でも,ジャスミン茶を飲むことができる機会がえました。

またこの曲には,花のかおりに包まれて気持ちがうっとりとしているだけではなく,自分にとってとても大切な人のことを思い,「その人と,この花の美しさやかおりをいっしょに味わえたらよいのに…」という思いもこめられています。

旋律せんりつに使われている音階が独特どくとくであり,そのため日本の音楽とは少しちがう感じを受けることでしょう。

また,題名は同じ「まつり花」でも,ちがう旋律の曲があります。

バーンスリー

インド

シタールとタブラー
インド
の古い音楽(ここでは古典こてん音楽とびます)は,北インドと南インドのものに大きく分けられます。

シタール
 シタールは,北インドの古典音楽を演奏えんそうするのに使われる楽器です。ひょうたんの実でできた共鳴胴きょうめいどう(音をひびかせて音量を大きくするためのもの)と,そこからのびる長くてがっしりとしたさおとが,この楽器の見た目を印象づけています。 

演奏にとても大切な役割やくわりを受け持つ1本のげんをふくめて,7本の演奏弦があります。また,このほかに13本ほどの,音を共鳴させるための弦が演奏弦の下にあります。この演奏弦と共鳴弦という2種類の弦が,この楽器ならではのひびきをつくり出しています。演奏するときは,左手人差し指と中指を,フレット(弦をおさえる場所をしめすもの)上で上下左右に移動いどうさせます。また,右手は針金はりがね素材そざいとするつめをつけて弦をはじきます。

 

タブラ
 タブラーは,2個で一つと見なされる打楽器です。
それぞれはタブラー(写真左)バーヤ(写真右)ばれています。北インドや,その周辺で使われていて,両方とも全体に丸みがあり,タブラーは木で,バーヤ金属きんぞくでできています。演奏するときは,タブラーを右手,バーヤを左手でたたきます。

ひものり方によって音の高さが調整できて,音階のように演奏することもできます。
また,皮の面にぬられているものによって,いろいろな音色が生み出されるともいわれています。
 

【参考曲】
・「ラーガ〜ジョゲショワリ」
曲名は,演奏えんそうするときに決められている音楽の奏法の名前だといわれています。この曲は,楽譜がくふをたよりにして演奏するのではなく,その場で作曲しながら演奏する即興そっきょう演奏ですので,演奏者によって全然ちがう音楽になることもよくあるそうです。


 バーンスリーは,フルートインドの管楽器で竹でできています。その起源きげんはたいへん古く,古代インドにまでさかのぼるといわれます。このような竹の管楽器では,その管のあつみが大切であるだけでなく,竹のふしと節の間が均等きんとうであることも重要だといわれます。北インドの竹は長く,このような条件じょうけんを満たしているので,さまざまな種類のバーンスリーを作ることができるようです。

今日こんにちインドで,主にフルートばれる横笛は,このバーンスリーのことを指します。もともと地方によって呼び方がいろいろとあり,バーンスリーは主に北インドでの呼び方のようです。

バーンスリー演奏えんそうでは,日本の尺八しゃくはちを演奏するときに使われる「ムラ息」のような息の使い方が多く用いられています。またバーンスリーの音色は,西洋のフルートというよりは,むしろ日本の尺八を思わせるようなところもあります。竹という同じ材質ざいしつの楽器だから尺八の音色と似ているのでしょうか。興味きょうみ深いところです。

 
 

【参考曲】
・「ラーガ ブーパーリーから ジャラ」
この曲では,一定の音をたもち続ける伴奏ばんそう楽器の上を,すべるように流れては,ときどきはげしく上下するような旋律せんりつ演奏えんそうされています。演奏者にはかなりのテクニックが要求されるにちがいありません。だからこそ,きく人はこの曲やバーンスリー特徴とくちょうである,印象的な音の色合いを味わうことができるのです。そしてまた,演奏のテクニックのすばらしさも思いうかべることができ,きくときの楽しみをやしてくれます。

シタールとタブラー

インド

シタールとタブラー
インド
の古い音楽(ここでは古典こてん音楽とびます)は,北インドと南インドのものに大きく分けられます。

シタール
 シタールは,北インドの古典音楽を演奏えんそうするのに使われる楽器です。ひょうたんの実でできた共鳴胴きょうめいどう(音をひびかせて音量を大きくするためのもの)と,そこからのびる長くてがっしりとしたさおとが,この楽器の見た目を印象づけています。 

演奏にとても大切な役割やくわりを受け持つ1本のげんをふくめて,7本の演奏弦があります。また,このほかに13本ほどの,音を共鳴させるための弦が演奏弦の下にあります。この演奏弦と共鳴弦という2種類の弦が,この楽器ならではのひびきをつくり出しています。演奏するときは,左手人差し指と中指を,フレット(弦をおさえる場所をしめすもの)上で上下左右に移動いどうさせます。また,右手は針金はりがね素材そざいとするつめをつけて弦をはじきます。

 

タブラ
 タブラーは,2個で一つと見なされる打楽器です。
それぞれはタブラー(写真左)バーヤ(写真右)ばれています。北インドや,その周辺で使われていて,両方とも全体に丸みがあり,タブラーは木で,バーヤ金属きんぞくでできています。演奏するときは,タブラーを右手,バーヤを左手でたたきます。

ひものり方によって音の高さが調整できて,音階のように演奏することもできます。
また,皮の面にぬられているものによって,いろいろな音色が生み出されるともいわれています。
 

【参考曲】
・「ラーガ〜ジョゲショワリ」
曲名は,演奏えんそうするときに決められている音楽の奏法の名前だといわれています。この曲は,楽譜がくふをたよりにして演奏するのではなく,その場で作曲しながら演奏する即興そっきょう演奏ですので,演奏者によって全然ちがう音楽になることもよくあるそうです。


 バーンスリーは,フルートインドの管楽器で竹でできています。その起源きげんはたいへん古く,古代インドにまでさかのぼるといわれます。このような竹の管楽器では,その管のあつみが大切であるだけでなく,竹のふしと節の間が均等きんとうであることも重要だといわれます。北インドの竹は長く,このような条件じょうけんを満たしているので,さまざまな種類のバーンスリーを作ることができるようです。

今日こんにちインドで,主にフルートばれる横笛は,このバーンスリーのことを指します。もともと地方によって呼び方がいろいろとあり,バーンスリーは主に北インドでの呼び方のようです。

バーンスリー演奏えんそうでは,日本の尺八しゃくはちを演奏するときに使われる「ムラ息」のような息の使い方が多く用いられています。またバーンスリーの音色は,西洋のフルートというよりは,むしろ日本の尺八を思わせるようなところもあります。竹という同じ材質ざいしつの楽器だから尺八の音色と似ているのでしょうか。興味きょうみ深いところです。

 
 

【参考曲】
・「ラーガ ブーパーリーから ジャラ」
この曲では,一定の音をたもち続ける伴奏ばんそう楽器の上を,すべるように流れては,ときどきはげしく上下するような旋律せんりつ演奏えんそうされています。演奏者にはかなりのテクニックが要求されるにちがいありません。だからこそ,きく人はこの曲やバーンスリー特徴とくちょうである,印象的な音の色合いを味わうことができるのです。そしてまた,演奏のテクニックのすばらしさも思いうかべることができ,きくときの楽しみをやしてくれます。

サウンガウ

ミャンマー

サウンガウ

今では,ほぼミャンマーのみで親しまれている楽器サウンガウは,「弓のように曲がった弦楽器げんがっき」を意味しています。インドから伝わった,やはり弓のような形のハープが,この楽器の起源きげんだといわれています。古い時代には7弦でしたが,9世紀になるころには13弦にえ,現在げんざいでは16弦のものがふつうです。こうした形になるまでには,さまざまな改良が重ねられました。

ふねのような形をした共鳴胴箱きょうめいどうばこ(音をよくひびかせるための箱)からのびる,自然の木がもつ曲がりぐあいをそのまま利用したさおに16本の弦がられています。楽器として見ると,かなり変わった形のように感じられます。発せられる音だけではなく,その独特どくとくの美しいかざりもあいまって,見た目からも異国いこくのふんいきを十分に感じ取ることができます。

演奏えんそうの仕方は,共鳴胴箱を右のひざに乗せて右のひじで固定し,左手の親指のつめで音の高さを調節しながら,右手の親指や人さし指で弦をはじきます。

日本では,「ビルマの竪琴たてごと」という映画えいがミャンマーは,もと「ビルマ」といいました)などを通して,この楽器が知られています。

 

 

【参考曲】

・「ウェイザ ヤンダー」

この曲では,サウンガウの美しい音色と,のどかでそぼくな音楽の気分を楽しむことができます。また旋律せんりつ構成こうせいする音階には,タイをもととする「ヨウダヤー」とばれる音楽のえいきょうが見られます。おそらく,ミャンマータイに古くからあった交流によるものでしょう。

ケチャ

インドネシア

ケチャガムラン

ケチャ

ケチャは,インドネシアのバリ島舞踊劇ぶようげきおどりをともなった劇)として知られています。バリ島の音楽は器楽のものが多いのですが,このケチャは,人の声だけによる演奏えんそうで,とてもめずらしいものです。
半分はだかになった大勢おおぜいの男の人たちが丸く輪になってすわり,いくつかのパートごとに「チャッチャッ」と歯切れよく,かけ声でもかけるように,声だけの細かなリズムをきざんでいきます。これがパートごとに少しずつずれてきこえても,いっせいにそろってきこえても,とても印象的なひびきをもたらしてくれます。
表現ひょうげんの仕方はいろいろとあり,合唱や独唱どくしょうのほかに,踊りや語りもあります。くり返されるリズム合唱,声による独特のひびきやリズムの躍動やくどう感が一つになって,せまってくるようです。人の声の生み出す不思議な力やひびき,うねりをわすれることができずに,このケチャを大好きになってしまう人も少なくないということです。
バリ島ではもともと「サンヒャン」とばれる声を使った宗教的しゅうきょうてき儀式ぎしきが行われていました。1930年ころ,その儀式にドイツ人のワルター シュピースが古代インドの「ラーマーヤナ」という話をもとにしながら,踊りなどをり交ぜ,それを観光客向けのショーとしたものが,現在げんざいのケチャなのです。

ガムラン

 ガムラン」はもともと,「打楽器」を意味する言葉でした。しかし近年では,この意味をこえて,「旋律せんりつ演奏えんそうすることができる打楽器を基本きほんとする合奏」という意味にまで広がりつつあります。現在げんざい,「ガムラン」といえば,ふつうインドネシアのこのような「合奏」を意味すると思ってもよいでしょう。

特に,ジャワ島の一部とバリ島において,この合奏が見られます。主に西部ジャワでは「声楽」を中心にしたガムランが,中部ジャワでは「声楽と器楽」とがみごとにりまぜられたガムランがさかんです。

一方バリ島では,「器楽」中心のガムランが行われています。

ガムランに使われる楽器としては,旋律を演奏する打楽器のほかに,太鼓たいこゴング弦楽器げんがっきもあります。これらによって表現される音の世界はいろどりもたいへんゆたかなものです。

【参考曲】

・「パンプゴ〜プラブ マタラム」

この「パンプゴ」とは,「序曲じょきょく」を意味しています。また曲名である「プラブ
マタラム」は,「マタラムの王様」という意味です。中部ジャワガムラン演奏形態えんそうけいたいに当たるこの合奏は,旋律せんりつを演奏する打楽器と太鼓たいこの音が印象的です。楽器の音に,とちゅうから声楽が加わることで,ほかにはない独自どくじな世界をつくり出しています。中部ジャワガムランの多くは,神秘的しんぴてきな感じを受けますが,本曲はまさに,精神的せいしんてきな世界のおく深さを感じさせるような,ゆたかな音楽表現ひょうげんになっています。

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