アルフーは
中国の
弦楽器で,
二胡と
呼ばれることもあります。バイオリンと同じように弓で弦をこすることによって音を出します。しかし,この楽器には弦が2本しかなく,そのうえ弓の毛を弦と弦の間にはさんで音を出すことや,楽器を左ひざの上にのせ,立てて
演奏することなど,演奏の仕方はバイオリンとずいぶんちがいます。
アルフーは,中国では京劇の旋律を受け持つジンフー(京胡)とともに,「胡琴」と呼ばれる民族楽器でしたが,今では,胡琴という場合にはふつうアルフーを指します。
独奏楽器としての演奏法は少しずつ工夫されてきていて,すぐれた作品も生まれています。この工夫の取り組みの中では,バイオリンの奏法も参考にされたようです。
楽器の構造ですが,ニシキヘビというとても大きなヘビの皮を張った木でできた共鳴胴(音をひびかせて音量を大きくするためのもの)から棹がのびていて,大きさは1メートルに少し足りないくらいです。弓は,これとほぼ同じ長さのものが使われます。この弓の毛には,馬のしっぽの毛が使われています。
また,よく胡弓という楽器にまちがえられますが,胡弓とは本来,日本の伝統楽器を指しますので,アルフーと胡弓は,はっきりと区別する必要があります。
【参考曲】
・「二泉映月」
「二泉映月」は,阿炳(華
彦釣*)の作曲です。かれは31歳のときに,病気がもとで目が見えなくなりましたが,アルフーの演奏と作曲で人気を集めました。
曲名にある「二泉」とは,中国の東部,上海近くの無錫にある天下第二泉という泉のことで,そのほとりは景色のたいへんすばらしいところです。その水面に映った光りかがやく月に,人の心のすがすがしさや人生のはかなさを歌っています。
深く心にしみこんでくるような曲で,作曲者自身,よくこの泉のほとりでアルフーを演奏していたそうです。近年,世界的にも有名な指揮者,小澤征爾さんが,この曲を広く世界にしょうかいしました。
* …画面表示できないため,「華」の文字を使っていますので,異なる表記をする場合があります。
ピーパー(琵琶)は,しずくのような形をした胴に4本の弦が張られていて,11〜18のフレット(弦をおさえる場所を示すもの)をもつ中国の弦楽器です。この楽器の歴史は古く,もとをたどると,2000年以上も前にペルシャ(西アジア)あたりから伝わったものともいわれています。日本にも琵琶という楽器として伝えられました。
ピーパーの演奏には,右手の指に弦をはじくためのつめなどをつけて,ばちは使わずに5本の指を使います。日本の琵琶は形が似ていますが,演奏にばちを使いますので,それとはちがったひびきや音楽を味わうことができます。
【参考曲】
・「十面埋伏」
この曲の題名は,昔の中国の漢という国における戦いの隊形に由来があります。この隊形は「十方向から待ちぶせをする」という意味をもっていて,そこにこうげきをしかける側にとっては,とてもせめにくいものです。紀元前200年ごろに,楚という国の軍が漢にせめ入ったのですが,漢の軍が使ったこの「十面埋伏」という強力な隊形にてこずり,ついには負けてしまったという歴史的な事実を表しているとされています。
戦いの様子を表現したこの曲は,演奏するのに10分以上かかります。どちらかといえば,日本の楽器の琵琶よりも,三味線やこと(箏)によるはなやかなふんいきの演奏に近いものといえるでしょう。特に,演奏が難しい中後半にかけての部分になると,音楽や楽器のひびきはいっそうはなやかさを増します。
民謡「まつり花」
「まつり花」は漢字で書くと,「茉莉花」と書きます。中国の民謡の一つです。日本で昔から「さくらさくら」が歌いつがれているのと同じように,中国で親しまれている歌で,花を愛する人々の心がよく表れています。
まつり花は,中国南東部の福建省が産地で,とても強いかおりの白い花をさかせます。「ジャスミン」とも呼ばれ,この花のかおりを生かしてつくるジャスミン茶を飲む習慣が昔からあります。このごろでは日本でも,ジャスミン茶を飲むことができる機会が増えました。
またこの曲には,花のかおりに包まれて気持ちがうっとりとしているだけではなく,自分にとってとても大切な人のことを思い,「その人と,この花の美しさやかおりをいっしょに味わえたらよいのに…」という思いもこめられています。
旋律に使われている音階が独特であり,そのため日本の音楽とは少しちがう感じを受けることでしょう。
また,題名は同じ「まつり花」でも,ちがう旋律の曲があります。