ピグミー族の合唱

アフリカ中央部

ピグミー属広大なアフリカ大陸にはさまざまな人々が住み,さらに気候や風土に合ったさまざまな生活スタイルがあります。これらの人種や生活様式のちがいは,音楽の様式や特徴とくちょうのちがいにも現れています。

ピグミー族は,主にアフリカ大陸中央部の熱帯雨林に古くから住み,りをして生計を立てる狩猟しゅりょう民族です。現在げんざいはアフリカ中央部(中央アフリカ共和国など)のほか,大陸の東部や南西部でも生活しています。ピグミー族は大きく3つのグループに分かれていて,その3つのグループもさらに細かく分かれています。

さて,アフリカ音楽の特徴の一つとして挙げられるのが,すばらしいリズム感覚です。その中でもピグミー族のリズム感覚は,特に複雑ふくざつに発達したものとして有名です。かれらのこのようなリズム感覚は,子どものころからそなわっているとされています。かれらが歌う歌には「ポリリズム(ちがったリズムが同時に演奏えんそうされること)」が用いられています。

アルプス地方のヨーデル独唱どくしょうに,手拍子てびょうしやかけ声,金属板きんぞくばんを打ち合わせる音が,複雑に組み合わさっています。さらに,子どもと大人のグループに分かれた合唱がそれぞれ重なり合うといった,高度な音楽表現にふれることもできます。

トーキングドラム

ガーナ

 アフリカに住む人々の生活の中では,音楽がとても多くの役割やくわりを果たしています。例えば,神話や伝説,教訓,身の回りの出来事などが,音楽にり交ぜられて演奏されます。また,病人の治療ちりょう,雨ごいなどの呪術じゅじゅつ宗教的しゅうきょうてきな目的に,音楽が使われることもあります。そして,人生の節目となる大切な行事(子どもの誕生たんじょう,成人式,結婚式けっこんしき葬式そうしきなど)でも,音楽はなくてはならないものになっています。

トーキングドラムは,ふだんの生活で使われる言葉の中で,まるで音楽のように上がり下がりのある言葉の長短や強弱,高低などをドラムでまねして,聞き手に伝えようとしています。

アフリカでは,トーキングドラムは「ブングング」とばれ,伝えたい内容ないようを伝達するための信号として使われていました。こちらが,本来の意味でのトーキングドラムです。例えば,裁判さいばんなどで,さまざまな意思を伝えるために使用されるなど,トーキングドラムにはとても大切な役割があります。また,ふだんの生活で使われるような物や場所などすべてを,表すことができるといわれています。

さらにもう一つ,音楽として楽しむために行われるトーキングドラムがあります。民族音楽としては,こちらのトーキングドラムのほうが,人々の注目を集めつつあるようです。

 

【参考曲】

・「オバタラ」

「オバタラ」は,アフリカ西部にあるナイジェリアヨルバ民族の神話に登場する神様の名前です。ここでのトーキングドラムは,その神様との交信を目的として演奏えんそうされています。太鼓たいこによって表現ひょうげんされる音色のおもしろさや打楽器によるリズムの複雑ふくざつな重なりなどが,ききどころとなるでしょう。

手拍子の踊りと歌

アフリカ東部

手拍子てびょうしおどりと歌

ケニアウガンダルワンダブルンジタンザニアといった地域ちいきのことを東アフリカともびますが,西アフリカやアフリカ中央部が主に農耕のうこうによって生活をいとなむのに対して,この地域では主に牧畜ぼくちくによって生活を営んでいます。

東アフリカの音楽の特色の一つとして,声楽と器楽のどちらにも,音楽表現ひょうげんの道具として「人の体」が重要な役割やくわりを果たすことが挙げられます。例えば,さけび声や手拍子てびょうしのリズムなどによる音楽です。

いくつかの種類の音を同時に鳴らすことを好むことも,特徴とくちょうとして挙げられるでしょう。例えば,独唱どくしょうと合唱がたがいにかけ合いながら,手拍子を打つものがあります。独唱の子どもがある物語を1フレーズずつ,語るように歌っていき,合唱の子どもたちはそれに答えるような形で,短い旋律せんりつを歌っていくのです。そこに,2拍子と3拍子が組み合わされた手拍子が重なるのです。この手拍子のように,ちがったリズムを同時に演奏する「ポリリズム」という表現のしかたはアフリカ音楽でよく使われていますが,これは正確せいかく拍感はくかんを長時間たもつことができるという,かれらの生まれつきの能力のうりょくのおかげだといわれています。

ハワイアン ミュージック

ハワイ諸島

太平洋のポリネシアに位置する島々(ハワイ,マーケサズ,サモア,タヒチ,トンガ,ニュージーランドなど)の音楽をポリネシア音楽びます。この中でもハワイの音楽は,19世紀末ころから大きな発展はってんをとげました。タヒチやサモアの音楽の要素ようそが取り入れられたり,アメリカの音楽などからも大きなえいきょうを受けたりしました。今では「ハワイアン」と呼ばれ,現代風げんだいふうのポピュラー音楽とされています。

19世紀にアメリカ人が移住いじゅうしてくる以前は,ハワイには伝統的でんとうてきな固有の音楽がありました。しかし,このような音楽は,キリスト教を広めるために来た宣教師せんきょうしの人たちの目には下品なものとしてうつり,禁止きんしされてしまいました。それからおよそ50年がたち,カラカウア王の時代に,宣教師たちの目のとどかない地域ちいきに残っていたこれらの伝統音楽が発見され,ふたたび人々の耳に届くようになりました。

現在「ハワイアン」と呼ばれる音楽は,これらの伝統音楽とは別に発展したと考えられていますが,発声法や楽器の使い方などに,伝統音楽と似ている点を多く見つけることができます。一方で,ギター,ベース,ドラムといったアメリカ風の楽器を中心に演奏したり発声を変えたりもしていて,伝統音楽とは大きくちがってきている音楽もあります。

どちらにしても,その多くは母音ぼいんの多いハワイ語をもとにしており,使われている旋律やリズムも,どちらかというと単純たんじゅんなため,現在では多くの人々にとって親しみやすい音楽となっています。

 

【参考曲】

・「アロハ オエ」

この曲は,世界で最も有名なハワイアンといってよいでしょう。日本でも,たいへんよく知られていて,ハワイ王朝最後の女王リリウオカラニが1878年につくったものといわれています。音楽の才能さいのうにめぐまれた女王は,このほかにも100曲をこえる曲をつくっています。「アロハ
オエ」とは「さようなら,あなた」という意味です。ハワイ語と英語によってつくられた歌詞かしは,「別れ」を歌っています。

バンジョー

アメリカ

ゴスペルは,もともと「福音書ふくいんしょ」(イエス
キリストのことが書かれているもの)という意味です。現在げんざいでは,アフリカけいのアメリカ人たちが通う教会のオルガン奏者そうしゃなどによって,かれらのためにつくり出された現代風な聖歌せいかとされています。そのゴスペルは,教会の礼拝れいはいでは,とても大切な役割やくわりを果たしてきました。

1920年代には,規模きぼの小さい教会が数多くおこりましたが,それにともなって,ゴスペルも広まっていきました。また,街にいる伝道者,コンサートやレコード,アフリカ系アメリカ人向けのラジオ局なども,ゴスペルが広く知られるきっかけとして,大いに役立ちました。

ゴスペルは,「スピリチュアル」(宗教的しゅうきょうてきな意味での歌や民謡みんよう)の現代版げんだいばんともいえるものです。礼拝のための音楽ですが,ジャズのようにリズムに乗って足をふみ鳴らしたり手拍子てびょうしなども交えたりして,独唱どくしょうや合唱で歌われます。このような聖歌のスタイルは,かれらの故郷こきょうであるアフリカの慣習かんしゅうと関係があるのでしょう。アフリカの人々は,礼拝のときにはげしくおどったり歌ったりすることによって自分をわすれ,自らをき放って自由な気持ちになります。これとたような特徴とくちょうが,ゴスペルを使った礼拝にも見ることができるのです。教会においてゴスペルは,司祭(牧師ぼくしともばれる)の説教(深い意味のあるお話)と同じくらいの大切な役割を受け持っています。また歌詞かしは,天国での幸せを歌うものが多く見られます。先の「スピリチュアル」とは少しちがって,ゴスペルは,どちらかと言えば明るくて前向きな考えに満たされています。
 バンジョーは,アフリカに起源きげんをもつとされる楽器です。アフリカからアメリカ大陸へ働かされるために連れてこられた人たちの間で,ギターマンドリンといった楽器のえいきょうを受けながら発達しました。丸く平たいどうに表面のみ皮のまくり,長いさおがつけられた弦楽器げんがっきです。現在げんざいではフレット(弦をおさえる場所をしめすもの)があり,4〜5本の金属製きんぞくせいの弦が用いられています。プレクトラム
バンジョー
バンジョリンなど,弦の本数や楽器の形,棹の長さのちがうものがあります。

バンジョーマンドリンギターなどの楽器を使った演奏えんそうのスタイルの一つに,「ブルー
グラス
」とばれるものがあります。このスタイルは,速い2拍子系びょうしけいのリズムが特徴とくちょうで,1940年代にビル
モンロー
という人によってつくられたとされています。軽快けいかいで明るい感じの気分をもった演奏スタイルです。

 

 

【参考曲】

・「バンジョー ボーイ チャイムス」

ブルー グラス」とばれるスタイルの演奏えんそうで,軽快けいかいで生き生きとした感じの曲です。

ゴスペル

アメリカ

ゴスペルは,もともと「福音書ふくいんしょ」(イエス
キリストのことが書かれているもの)という意味です。現在げんざいでは,アフリカけいのアメリカ人たちが通う教会のオルガン奏者そうしゃなどによって,かれらのためにつくり出された現代風な聖歌せいかとされています。そのゴスペルは,教会の礼拝れいはいでは,とても大切な役割やくわりを果たしてきました。

1920年代には,規模きぼの小さい教会が数多くおこりましたが,それにともなって,ゴスペルも広まっていきました。また,街にいる伝道者,コンサートやレコード,アフリカ系アメリカ人向けのラジオ局なども,ゴスペルが広く知られるきっかけとして,大いに役立ちました。

ゴスペルは,「スピリチュアル」(宗教的しゅうきょうてきな意味での歌や民謡みんよう)の現代版げんだいばんともいえるものです。礼拝のための音楽ですが,ジャズのようにリズムに乗って足をふみ鳴らしたり手拍子てびょうしなども交えたりして,独唱どくしょうや合唱で歌われます。このような聖歌のスタイルは,かれらの故郷こきょうであるアフリカの慣習かんしゅうと関係があるのでしょう。アフリカの人々は,礼拝のときにはげしくおどったり歌ったりすることによって自分をわすれ,自らをき放って自由な気持ちになります。これとたような特徴とくちょうが,ゴスペルを使った礼拝にも見ることができるのです。教会においてゴスペルは,司祭(牧師ぼくしともばれる)の説教(深い意味のあるお話)と同じくらいの大切な役割を受け持っています。また歌詞かしは,天国での幸せを歌うものが多く見られます。先の「スピリチュアル」とは少しちがって,ゴスペルは,どちらかと言えば明るくて前向きな考えに満たされています。
 バンジョーは,アフリカに起源きげんをもつとされる楽器です。アフリカからアメリカ大陸へ働かされるために連れてこられた人たちの間で,ギターマンドリンといった楽器のえいきょうを受けながら発達しました。丸く平たいどうに表面のみ皮のまくり,長いさおがつけられた弦楽器げんがっきです。現在げんざいではフレット(弦をおさえる場所をしめすもの)があり,4〜5本の金属製きんぞくせいの弦が用いられています。プレクトラム
バンジョー
バンジョリンなど,弦の本数や楽器の形,棹の長さのちがうものがあります。

バンジョーマンドリンギターなどの楽器を使った演奏えんそうのスタイルの一つに,「ブルー
グラス
」とばれるものがあります。このスタイルは,速い2拍子系びょうしけいのリズムが特徴とくちょうで,1940年代にビル
モンロー
という人によってつくられたとされています。軽快けいかいで明るい感じの気分をもった演奏スタイルです。

 

 

【参考曲】

・「バンジョー ボーイ チャイムス」

ブルー グラス」とばれるスタイルの演奏えんそうで,軽快けいかいで生き生きとした感じの曲です。

フォルクローレ

ペルー/ボリビア

フォルクローレ
 フォルクローレという言葉は,もともとは英語のフォークロア(民俗みんぞく,人々が文化などを伝えていくことなど)を意味します。これが同じつづりのままスペインに入り,20世紀に入ってからしだいに民俗音楽のことを指す言葉として使われるようになりました。現在げんざいでは意味がさらに広がって,中央アメリカや南アメリカの民謡みんようの形を借りたポピュラー音楽や,民族音楽的な要素ようそをもつ大衆音楽たいしゅうおんがくまでもが,フォルクローレばれているようです。

日本では,フォルクローレというと,主に南アメリカアンデス地方の民族楽器であるケーナ尺八しゃくはちた楽器)や,チャランゴ(アルマジロのこうらをどうに使ったげん楽器)などを用いて演奏えんそうする音楽を指すのが習慣しゅうかんとなっています。

この音楽には,大航海時代以来の南アメリカ大陸の歴史がきざまれています。というのは,もともとその地に住んでいたインディオの音楽,スペインの都市音楽,そしてアフリカの音楽のリズムなど,さまざまな要素がざり合ってできているからです。そのため,いろいろな音楽の気分がはば広く感じられ,どこか異国的いこくてきな味わいもあります。

 

【参考曲】

・「コンドルは飛んで行く」

この曲は,ペルーの作曲家,ロブレスが作曲したスペインの植民地支配しはいに対するインディオの反乱はんらんをテーマとしたサルスエラ(小さな民族的歌劇かげき「コンドルカンキ」の中の1曲で,ペルーの古い民謡みんようをもとにしてつくられました。

その後,ヨーロッパに住む南アメリカ出身のグループ「ロス インカス」のメンバーのミルチベルクという人によって,ポピュラー風につくり変えられました。さらにこれをもとにして,アメリカの人気フォーク
グループ「サイモンとガーファンクル」が英語の歌詞かしを付けて歌い,世界的な大ヒットとなりました。

学校臨時休校に伴い、児童生徒が家庭で学習する際の参考となる音源をホームページ上に公開しました。

このたびの学校臨時休校に伴い、児童生徒が家庭で学習する際の参考となる音源をホームページ上に公開しました。
小・中の教科書に掲載されている歌唱曲をきいたり楽器の演奏の仕方、高校向けには、教芸ホームページで公開している動画のリンクを紹介しています。

 公開期間は休校期間に準じ、その間はすべて無料で聴くことができます。
なお内容については、今後更新や変更等が行われる可能性があります。

自宅学習支援コンテンツ
URL
https://textbook.kyogei.co.jp/library

ロマニーの音楽

ハンガリー

ロマニーの音楽
 ハンガリーの民族音楽は,マジャール人(ハンガリー人は自分たちをこうびます)の民謡みんようと,ロマニー(かつて一つの場所に住むことなく,いろいろな土地にうつり住んで生活していた人)の音楽との2つに大きく分けられます。その中でも,バイオリンツィンバロム演奏えんそうを中心とするロマニーの音楽に,18世紀後半から19世紀にかけて,ヨーロッパの人々は夢中むちゅうになったといいます。

ツィンバロムは,ダルシマーばちげんを打ちながら演奏する弦楽器)という楽器の仲間で,ピアノクラビコードという楽器の祖先そせんに当たる楽器です。楽器の構造こうぞうには,わずかなちがいが見られますが,同じ種類の楽器は,ヨーロッパをはじめとして,西アジアや中央アジア,東アジアにも広く見られ,地域ちいきによってさまざまな名前で呼ばれています。古い歴史をもつ楽器ですが,民族楽器としてさかんに使われるようになったのは,18世紀から19世紀にかけてで,とくに東ヨーロッパでのロマニーの楽団がくだんには欠かせないものとなりました。

今日では,特にハンガリールーマニアの代表的な民族楽器として知られるツィンバロムの楽器の形は四角形で,表面は音をひびかせるための板になっています。その上にられた多数の細い金属製きんぞくせいの弦を,フェルトの付いた2本のばちで打って音を出します。

 

 

【参考曲】

・「花の季節」

この曲は,ロマニーの音楽の代表的な形式であるチャールダーシュ(ゆるやかな速度で始まる導入部どうにゅうぶと速い速度の主要部からなる)でできていて,バイオリンツィンバロムなどを使って演奏されます。

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