ゴスペルは,もともと「福音書」(イエス
キリストのことが書かれているもの)という意味です。現在では,アフリカ系のアメリカ人たちが通う教会のオルガン奏者などによって,かれらのためにつくり出された現代風な聖歌とされています。そのゴスペルは,教会の礼拝では,とても大切な役割を果たしてきました。
1920年代には,規模の小さい教会が数多く興りましたが,それにともなって,ゴスペルも広まっていきました。また,街にいる伝道者,コンサートやレコード,アフリカ系アメリカ人向けのラジオ局なども,ゴスペルが広く知られるきっかけとして,大いに役立ちました。
ゴスペルは,「スピリチュアル」(宗教的な意味での歌や民謡)の現代版ともいえるものです。礼拝のための音楽ですが,ジャズのようにリズムに乗って足をふみ鳴らしたり手拍子なども交えたりして,独唱や合唱で歌われます。このような聖歌のスタイルは,かれらの故郷であるアフリカの慣習と関係があるのでしょう。アフリカの人々は,礼拝のときに激しく踊ったり歌ったりすることによって自分を忘れ,自らを解き放って自由な気持ちになります。これと似たような特徴が,ゴスペルを使った礼拝にも見ることができるのです。教会においてゴスペルは,司祭(牧師とも呼ばれる)の説教(深い意味のあるお話)と同じくらいの大切な役割を受け持っています。また歌詞は,天国での幸せを歌うものが多く見られます。先の「スピリチュアル」とは少しちがって,ゴスペルは,どちらかと言えば明るくて前向きな考えに満たされています。
バンジョーは,アフリカに起源をもつとされる楽器です。アフリカからアメリカ大陸へ働かされるために連れてこられた人たちの間で,ギターやマンドリンといった楽器のえいきょうを受けながら発達しました。丸く平たい胴に表面のみ皮の膜を張り,長い棹がつけられた弦楽器です。現在ではフレット(弦をおさえる場所を示すもの)があり,4〜5本の金属製の弦が用いられています。プレクトラム
バンジョーやバンジョリンなど,弦の本数や楽器の形,棹の長さのちがうものがあります。
バンジョーやマンドリン,ギターなどの楽器を使った演奏のスタイルの一つに,「ブルー
グラス」と呼ばれるものがあります。このスタイルは,速い2拍子系のリズムが特徴で,1940年代にビル
モンローという人によってつくられたとされています。軽快で明るい感じの気分をもった演奏スタイルです。
【参考曲】
・「バンジョー ボーイ チャイムス」
「ブルー グラス」と呼ばれるスタイルの演奏で,軽快で生き生きとした感じの曲です。