広島県: | 音戸の舟歌| 宮島管絃祭| 田植歌(壬生の花田植)|
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音戸の舟歌 |
「舟歌」は,「櫓こぎ歌」や「船頭歌」ともいい,海で船をこぐときに歌う仕事歌のことです。広島県では,昔から海で船をこぐときの歌には, (1)漁師が船をこぐときの歌 (2)農夫が島に渡る船をこぐときの歌 (3)人や物を運ぶ船をこぐときの歌 の3つがありましたが,現在では,(1)だけが残っています。 その(1)の「漁師が船をこぐときの歌」には,さらに (ア)漁に出るとき (イ)漁をしているとき (ウ)漁から帰るとき の3つの場合があり,それぞれに特徴がありました。 (ア)は,たくさん魚がとれるようにと期待をこめて,ゆっくりとしたテンポで歌われました。(イ)は,魚をとっているときなので,こぐ歌はあまりありません。(ウ)は,とれた魚を早く市場に出そうと船を飛ばすので,テンポが速く歌われました。「音戸の舟歌」は,この中の(ア)の歌として残っています。 「音戸」は,瀬戸内海にうかぶ倉橋島(広島県安芸郡)にある地名で,近くの呉の町とはわずかの距離ですが,その島と町との間は潮の流れが速く,平安時代の末ごろ,平清盛がこの瀬戸(せまい海峡のこと)を開いたと伝えられているところです。この流れの速い瀬戸を上下する漁船の船頭の苦労を歌った歌が「音戸の舟歌」です。 よく歌われている歌詞は次のものです。 ヤ〜レ 船頭かわいや 音戸が瀬戸にゃヨ〜 一丈五尺の ノ〜ヤレ 櫓がしわるヨ〜 ヤ〜レ 沖の宮島まわれば七里ヨ〜 七里七浦 ノ〜ヤレ 七えびすヨ〜 ヤ〜レ 沖の暗いの白帆が見えるヨ〜 あれは紀の国 ノ〜ヤレ みかん船ヨ〜 ヤ〜レ 沖のかもめに 潮時聞けばヨ〜 わたしゃ立つ鳥 ノ〜ヤレ 波に聞けヨ〜 |
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宮島管絃祭 |
宮島の管絃祭は,海に囲まれた宮島ならではのお祭りで,瀬戸内海を舞台にして繰り広げられます。 お祭りの舞台となる厳島神社は,潮が満ちると海の上に浮かんでいるように見えることで有名であり,お祭りが行われる旧暦の6月17日は夕方から潮が満ち始める時期に当たります。また,このころは満月に近い月がのぼるため,御輿をのせた御座船の上で,月明かりに照らされながら演奏される管絃を聴くことができます。 お祭りは夕方に始まり,御座船は曳き船にひかれて,船上で管絃を演奏しながら対岸の地御前神社に向かいます。日が沈むと御座船にはかがり火がたかれ,ぼんぼりには火がともされます。御座船は,地御前神社や長浜神社,大元神社の前で管絃を演奏したのち,厳島神社へと戻ってきます。そのころには潮が満ちているため,船は建物のすぐ近くまで進みます。祭りはクライマックスを迎え,狭いスペースで船を3回,回転させながら演奏を披露すると,参拝客からは拍手や声援がおくられます。
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田植歌(壬生の花田植) |
田植歌は,田んぼに稲のなえを植える作業をしながら歌う仕事歌で,全国各地にみられます。 稲作には,農作業がいそがしい時期と,落ち着いている時期があります。いそがしい時期には,たくさんの人たちが集まり,大変な重労働である田植えや稲刈りなどを行いました。そのため,少しでも働き手のつかれをいやし,負担のかかる厳しい作業がはかどるように,歌やお囃子に合わせて農作業を行うようになったそうです。 中国地方一帯では,「囃し田」,「田囃」などと呼ばれ,その歴史は室町時代にまでさかのぼるといわれています。 また,田植えの時期の最後には,その土地の有力者が行った「大田植」と呼ばれる特別な田植えの行事がありました。にぎやかなお囃子の中で田植えが行われる様子がとてもはなやかであったことから,「花田植」とも呼ばれるようになったといわれています。 広島県北広島町には,川東田楽団と壬生田楽団による「壬生の花田植」が伝わっています。昭和51年に国の重要無形民俗文化財に指定され,平成23年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。 この壬生の花田植は,毎年6月第一日曜日に行われる行事です。もともと花田植は,田の神にいねの豊作を祈願する行事でした。明治から大正にかけて,途絶えそうになったこともありましたが,昭和初期になると,当時の人々や町の商家の組織が中心となって「郷土芸術」として復活しました。 花田植にみられる音楽的な要素としては,「サンバイ」「囃し」「早乙女」が挙げられます。 サンバイは,花田植の行事全体をまとめる役割(音頭取り)で,ササラと呼ばれる煤竹を割ったものを打ち鳴らしながら,花田植の指揮をとります。 囃しは主に楽器を担当し,使用される楽器は,大太鼓,小太鼓,手打鉦,笛などです。小太鼓と手打鉦は,サンバイのササラに合わせて拍子を取り続け,笛は歌の旋律を奏でます。囃しの打ち方には種類があり,歌によって決まっていますが,時にはばちを投げ上げてとなりの人に受けわたしたり,上半身を前後左右にくねらせたりしながら,にぎやかに奏されます。 早乙女は,サンバイの音頭に合わせて田植歌を歌いながら,なえを植える女性たちのことを指します。 北広島町には,「安芸のはやし田」の名で国の重要無形民俗文化財に指定されている新庄のはやし田や,原東大花田植なども,大切に受けつがれています。 ※「花田植」の名称について 文化財の名称としては「はなたうえ」と読まれていますが,地元では「はなだうえ」と呼ばれることが多いようです。 |
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