カヤグムは,
朝鮮半島に古くから伝わる12本の
弦をもった横長の楽器です。日本の
こと(
箏)とよく
似た形をしていますが,
ことが
つめを使って
演奏するのに対して,
カヤグムは
つめを使わず,右手の親指,人さし指,中指の3本の指を使って演奏します。指の先で弦をおさえて,それをはなすことで音を出すこともできます。左手で弦をゆらして音にゆれをつくることもできます。弦は
絹の糸でできていて,
琴柱によって音の高さを調節します。
とてもきれいな音色で,たとえるなら,こわれやすいかざり物のようです。大きな音を出すことができないため,現在では多くの改良が試みられ,音がよくひびくように工夫したり,弦の本数を増やしたりした楽器も現れてきています。
カヤグムには,それぞれの音楽の特徴に合わせて,伝統音楽用と民俗音楽用の2種類があります。民俗音楽に使われるものは伝統音楽のものよりやや小さく,こちらが広く知られています。
カヤグムの祖先は,紀元前にはあったとされています。本などで調べてみると,新羅(4世紀から10世紀にかけて朝鮮半島で栄えた国の名前)の時代に中国の箏をモデルに作られたという記録があります。現在でも独奏,器楽による重奏,そして歌や器楽の伴奏などで,人々に親しまれている楽器です。
【参考曲】
・「チンヤンジョ」
ゆるやかな速さで演奏されるこの曲は,カヤグムのみりょくを引き出しています。特に,ビブラートと呼ばれる,びみょうな音のふるえはとても美しく,この楽器の重要な演奏手法の一つです。また,伴奏には,チャンゴという砂時計のような形の胴をもった両面太鼓が使われています。この楽器は,右手はばちで,左手は素手でたたいて演奏します。
民謡「
アリラン」
「アリラン」は,
朝鮮半島で人々に親しまれている
民謡の一つです。地方によって,いろいろな「
アリラン」があって,数百種類にのぼるといわれています。「
アリラン」という曲名は,かなり前から使われていたようですが,この言葉がどのように生まれたのかについて,くわしいことは分かっていません。
朝鮮半島の民族音楽は,3拍子がもとになっているものが多いようですが,この曲についても同じことがいえます。日本では2拍子がもとになっているものが多いので,ここに大きなちがいがあることが分かります。朝鮮半島は日本ときょりが近いため,昔から文化的にも交流がありました。それにもかかわらず,音楽の感じ方や表現の仕方に明らかなちがいがあるのです。
もともと朝鮮半島の音楽は,となりの中国のえいきょうを強く受けてきましたが,さらに西にある国々とのかかわりもあり,これらがともに受け入れられることで,独特な音楽文化をつくり上げてきたのでしょう。
世界の人々がこの「アリラン」を知るようになったのは,1920年代になってからです。アメリカ人の宣教師がしょうかいしたのがきっかけでした。
たくさんあるアリランの中で,ふつう「アリラン」といえば,「新アリラン(本調アリラン)」のことをいいます。教科書にものっている曲で最もなじみがあります。この曲も3拍子がもとになり,ゆったりとしていて音の上下の動きもあまり激しいものではありません。旋律に使われている音は独特で,日本の音楽とはちがった気分が伝わってきます。
伴奏には,カヤグムとチャンゴ,竹でできた横笛テグムとピリ(日本の雅楽の楽器,篳篥という楽器の仲間)が使われています。