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H1

音楽科の評価 Q&A

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回答いただいた先生 ※勤務先は取材当時のものです。
熱田庫康(埼玉県さいたま市立馬宮東小学校)
大関 英(東京都目黒区立目黒第七中学校)

Q1 時間数が減ったうえに「評価」の負担。 どのように取り組めばよいのでしょうか?

A まず,「評価」は授業をよくするため,楽しい授業にするためにあるのだと考えましょう。同時にそれは子どもの学習意欲を高めるものだ,とも考えましょう。

「評価は大変だ」「時間数が減って評価まで手が回らない」などという声も確かに聞きます。しかし,少ない時間だからこそ,指導の密度を高める必要があり,そのために「評価」が大切になってくるのです。

例えば,「アンサンブルの楽しさを心から味わおう」という題材の授業で,導入時に「多少の間違いはあるものの,主旋律をグループの人たちとずれることなく最後まで演奏している」という具体の評価規準を設定したとします。ここで気を付けなければならないのは,この段階で「おおむね満足=Aを含むB」の,Aの子を探すのではなく,「みんながBの範囲に入っているか」に気を配ること,つまりCの子がBに入れるように努力することです。なぜならこの段階でこのことに配慮しておけば,後の学習がとてもうまくいくからです。

ここでの教師は,Aを含むBの子どもたちを綿密に見ることよりも,Cのレベルにいる子どもたちをしっかりサポートすることにエネルギーを使うべきなのです。そして学習は次の段階に進み,同時に評価もまた新たな段階に入ります。もし,そうした先の見通しや計画を立てておかないと,導入の時間から音色や曲想のことまで,あらゆることを指導したり評価したりしなければなりません。これは大変なことです。

このように,子どもたちがしっかりと力を付けることのできる,よりよい授業を「効率よく」進めるために評価はあるのだと考えてください。

確かに資料などを読むと,膨大な労力がかかるのではという印象を感じたり,複雑な手法として受け止めてしまったりする可能性はあります。しかし,だからといって「ひな型」を見てただその焼き直しをする(これは子どもを見失う原因になってしまいます)のではなく,自分自身の実践に自信をもって計画を立てることが大切であると思います。

Q2 「規準」と「基準」の違いを分かりやすく教えてください。

A 例として適切かどうか分かりませんが,こんなふうに考えてはどうでしょうか。

「富士山の山頂まで登る」という目標があったとすると,「ここまで登れば合格」というポイント,これは努力すれば実現できるもので,かつ達成感を味わえるポイントですが,これを「規準」ととらえます。それを仮に富士山の5合目とするならば,5合目付近に来た子どもは「おおむね満足=Aを含むB」と考えます。

それに対し,教師が先頭を歩き,トップの子どもが山頂に着いたときに振り返って,「7合目以上まで来た子がA」とか「5合目以上まで来た子がB」「そこまで行かなかった子がC」などと,ABCという境目を示す尺度が「基準」だと言えます。

さて,ここからがたいへん重要です。これからの教師は,いかに多くの子どもたちを5合目付近(「おおむね満足」の地点)まで達するようにさせるか,を第一に考える必要があります。繰り返しますが「山頂にたどり着く」ということが「規準」になるのではなく,だれもが努力すれば達成することのできる内容が「規準」として設定されるべきなのです。

その場合「おおむね満足」の地点である5合目にたどり着くまでの道のりには子どもによってさまざまなものがあります。さらにはたどり着いたその先の道のりにも,さまざまなものがあります。5合目まで来たら,高山植物の観察をしてもいいし,景色をスケッチしてもいい。「ここまで登って来た方法を応用して,いろいろな楽しみ方があるよ」と投げかけてもよいでしょう。そういったプラスαの活動の達成に至った子にはAという評価を与えることができるでしょう。そしてそのAの在り方にはさまざまなものが考えられるのです。

子どもたちはさまざまな能力や可能性をもっています。最初から「B=5合目」「A=7合目」という「基準(尺度)」を決めて指導すると,指導の幅も多様性もかなり制限され,子どもの多様性に対応することができなくなりますし,評価もたいへん窮屈で冷たいものになってしまいます。

それと同時に,教師の指導法にも変化が求められるかもしれません。

山頂や別の山から子どもたちを励まし,「7合目までは何人だ,5合目まで登れていないのは何人だ」とするのではなく,教師自身がふもとと5合目の間を往復しながら,まだ5合目に行き着かない子どもを支援して,一人でも多くの子どもがまず5合目まで到達できるようにする。そのことに全力を傾けるためにも評価「規準」の存在が大切になってきます。

音楽科にとってはこの「規準」という考え方はたいへんふさわしいものと思います。これに対して,子どもの能力を数値に置き換えたり,限定した目標だけに向かわせてしまう「基準」は,特に音楽科においては設定すべきではないと考えます。

とはいえ,特に中学校においては,内申点の問題や他教科との整合性などから,「基準」的なものを設定するのもやむを得ないところがあるかと思います。ただ,いずれにしても,今まさに音楽科の理念を改めて問い直す機会であるとすれば,「規準」の意味を十分理解し,授業の中で子どもたちと音楽をどう楽しんで,どう発展させていくかを考えることがより重要であろうと言えます。

Q3 評価規準の作成方法をアドヴァイスしてください。

A 作成方法に関しては,指導書や解説書に述べられているように,「題材の目標」や学習活動の内容から「内容のまとまりごとの評価規準」を導き出し,そこから「題材の評価規準」を作成し,学習の流れに即して「学習活動における具体の評価規準」を設定するのがオーソドックスな方法ですが,ここでは,自分なりの取り組みを紹介することにします。

題材の指導計画を立てる際に常に念頭にあるのは,「どんな授業をしたら楽しくなるか」の一点だといっても過言ではありません。それを実現するために,まず「主な学習活動」を書き出すことから始めます。そうすることによって,学習活動の際に子どもたちの様子を「こう見よう」という「具体の評価規準」が生まれてきます。

例えば,年間を通して題材の数が7つあるとします。はじめは虫食いの状態でも,構わず各題材ごとに「主な学習活動」と,考えられる「具体の評価規準」を書き出してみます。そのうえで,年間を通しての順序性や系統性を考慮したり,題材名や教材の配列などを工夫します。

次に,たとえ未完成であってもその状態のものを,学習指導要領との整合性を図るためにマトリックス(一覧表)にしてみます。そうすることによって指導事項や評価規準,活動内容や教材の年間を通したバランスの良し悪しが改めて明らかになります。

年間のバランスが取れた指導計画が構成できたら,そこで初めてそれぞれの「題材の目標」を立てます。

「題材の評価規準」は,既に「主な学習活動」によって作られた「具体の評価規準」と歌唱,器楽,創作,鑑賞の「内容のまとまりごとの評価規準」をもとに,「評価の4つの観点」と照らし合わせて,それぞれが網羅されるように作成します。全体(年間計画)と個(題材ごとの指導計画)を往復しながら練り上げていく形になります。

大事なポイントは,目標から筋道を追って作成していくより,1単位時間の実践から入ったほうが現実的に作成しやすいということです。

繰り返しますが,自分がしたい授業,子どもたちが楽しめる授業をすることが出発点なのです。また,ある程度試行錯誤を繰り返さないと,完璧にしていくことは不可能ですし,時間をかけて徐々に作成して構わないのではないでしょうか。全体の枠をきちんと作っておけば,虫食い的に空欄があってもよいと思います。先の見通しを立てる,ということが重要なのです。

Q4 見えにくい観点の評価はどのようにしたらよいでしょうか?

A 「音楽的感受」や「鑑賞の能力」という観点においては評価が難しい,見えにくいというのが本音です。そこで,見えにくい部分については,「子どもたちが感じたことは,言葉や行動・態度に表れてくる」と考えて,「見える姿」に置き換えてとらえてよいのではないでしょうか。もちろん,子どもにとっては「表現できないけれど,思っていた」などということもあるのではないかと思います。しかし,心の中まで入っていって見る,などということは不可能ですし,その結果,教師が感知し得ない面も当然出てくると思うのです。見ようとする努力を教師はするべきですが,限界もあると割り切ってよいと思います。そういう前提である例を示してみます。(表参照)

とはいえ,例えば評価カードなどを使って,後で客観的に分析できる材料を探そうとするあまり,「評価のため」の無味乾燥な授業になってしまうことのないように気を付けたいものです。

4つの観点はあくまでも身に付いたものを見るための分析の方法であって,4観点を設定した意義は,単一の観点のみで子どもの可能性を見るのでなく,多角的に複眼的に見ましょう,ということなのです。

ですから,4つの観点は「4つの活動内容」ではないわけですし,「観点先にありき」ではないのです。「いまやっていることはどれに当てはまるのか」などと考えて悩むのは,いわば本末転倒と言えましょう。

余談かもしれませんが「音楽的な感受や表現の工夫」という観点が分かりにくい,という声もよく聞きます。この観点については,もともと音・音楽を通して思考・判断しているかどうかを見る観点である,と考えるぐらいでもよろしいのではないかと思います。

見えにくい観点 
評価のポイント例 
音楽への関心意欲・態度
[歌唱活動]
表情の豊かさや口の開け方の度合い。身体的表現の有無。パート練習時における集中度。パートのための発言や協力の有無。
[器楽活動]
教師との二重奏や小アンサンブルの進み具合のチェック。楽器習熟への粘り強さ。身体的表現の有無。グループ練習時における集中度。楽器選択や役割分担時の態度。グループのための発言や協力の有無。
音楽的な感受や表現の工夫 
感じ取った内面を浮き立たせる質問に対する答の分析。
感受の前後の表現(『表現⇒感受⇒表現』)の変容。 
鑑賞の能力 
鑑賞への集中度の観察。質問に対する答の内容の分析。感想中の「自分の言葉」の有無。感想の分量。「どうしてそのように思うのか」の理由の妥当性。 

 
 
 

Q5 合唱や合奏の活動において、子ども一人一人をどのように評価していけばよいですか?

A 音楽科の授業においては,合唱や合奏,あるいは鑑賞といった音楽活動の中で指導と評価が一体になっています。従来,音楽科の先生方はその指導と評価を実践してきたわけです。したがって,新しい評価だからといって,活動の流れを止めて評価したり,授業の終わりに必ず学習カードや自己評価を書くようなことは,できれば避けたいと思っています。では,何も変えなくていいのか,となると,それもいけないと思います。

実践においていつも心がけていることは,「できることから始める」「自分の足元を見直す」ということです。そこで大切となるのは,常に自分自身の授業のスタイルを問い直すことです。

前回の学習指導要領の改訂で「新しい学力観」が導入されて以来,グループ活動や子どもの意見が取り入れられている授業はすべてよく,一斉指導や教師主導型はよくない,などと声高に言われています。しかし,授業の本質や価値はそんな単純に割り切れるものではありません。とりわけ音楽科の授業では,一斉的な活動の中でこそ個が生きる場面も決して少なくないし,教師の適切な指導なしには,子どもに音楽的な能力が身につくこともそれほど期待できないと思います。

したがって,自分自身の授業を反省的にチェックする際には,表面的な活動形態の工夫のみに目を奪われずに,子どもと音楽(教材)とのかかわりの中味そのものを問い直さなければなりません。この活動ならグループ活動や相互評価が適切だ,この活動は一斉で教師の観察法を取る,といった固定観念をもう一度問い直してみるということなのです。そうすることによって,この題材は,思い切って生徒主導の展開にしてみようとか,ここは個別のグループではなくクラス全体で取り組んでみよう,など新たな発想が生まれてくるし,一方で,やはり今までの方法がいちばんよいと思う部分も確認できます。先ほども言ったように,我々は長年音楽活動の中で指導と評価を経験的に実践してきたわけです。何も特別なことを始めるのでなく,学習者の立場で授業のスタイルをしっかりと改めて問い直すことによって,適切な評価の方法もおのずと見えてくるのではないでしょうか。

そのうえで,評価の客観性,信頼性という点ではやはり評価の材料(データ資料)を集める工夫も必要となります。それに関して具体的には次のような取り組みを行っています。

週一回の授業,一クラス40人弱で計12クラス‥‥この人数を一人一人的確に評価するのは,相当な記憶力がない限りは至難の技です。そこで,評価のための授業に陥らないこと,評価のために音楽活動の流れを止めないこと,この点を常に踏まえつつ,後で客観的に評価できる材料,データ資料,記録を日頃の実践から集めるように心がけています。

ここでは,指導に生きる評価を目指して,数年前から実践している取り組みを紹介することにします。

●合唱用整列チェック表(合唱の並びのとおりに生徒の氏名を記載したもので,○×△などを瞬時に記入できるもの)などを用意し,授業内で気付いたことをすぐ書き込めるチェックリストを作る。
●クラスごとに個人カルテを作成し,授業後にチェックリストの内容を転記し保存する。
●年度最初にクラスごと(12クラスあるなら12本)の録音・録画ができるテープ,MD,ビデオテープ,8ミリテープ,デジタルビデオテープなどを購入しておく。
●指導の節目ごとにMD録音やVTR録画をする。もちろん実技試験時には通常とは別のテープを準備し「平成14年度2学期歌唱試験」などと銘打って撮影・保存する。

チェック表は,Cの段階の子どもを援助するために使うのではなく,むしろAの子どもを探すために利用します。録音・録画については,人前で演奏することは授業において重要であると思っているので,聴衆がいなくても,ビデオカメラがあるだけで「見られている」という意識や緊張感を作るために役立ちます。また,下級生に上級生の授業を見せるなどの使い方をしても,効果があります。単に評価のための記録としてではなく,表現者としての育成を音楽科の特性のひとつととらえることからも,さらには教師自身の指導をチェックするためにも,録音や録画を有効に活用すべきだと思っています。


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