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先生方の授業の工夫をご紹介します。
小・中学校
東京都東大和市立第十小学校教諭
千田鉄男 先生

本時の授業について

本時の授業は,合奏曲「美女と野獣」を取り上げました。「メロディーを生かして」という題材を設定していますが,基本的にはいわゆる「楽曲による題材構成」の形をとりながら,しかし単に楽曲の演奏に終わることなく,そこに学習活動の「核」となるものを設定しています。本時においては「メロディーが生きるようにバランスを工夫する」ということがそれに当たります。次に大まかな学習の流れを記します。

1.「つばさをだいて」を歌う。
授業の導入として,前題材で取り上げた曲を合唱します。後半のソプラノ,アルトの音程をしっかり覚えさせ,より深い感じ取りや表現へとつなげていきたい,という願いをもっています。

2.「美女と野獣」の合奏をする。
(1)楽器の準備をする。
 準備とはいえ,ここから合奏の活動が始まっている,ということを強調します。
(2)範奏CDを聴く。
 楽譜を目で追いながら聴いたり,楽器の運指だけをしながら聴きます。
(3)全曲を通して演奏する。
 うまくいかなくても全員が止まらない限り通して演奏します。
(4)メロディーパートを確認する。
 どのパートがメロディーを受け持っているかを,部分ごとにお互いに聴き合いながら確認します。メロディー以外のパートの役割なども同時に考えさせます。ここが本時の中心となる部分です。
(5)バランスを考えながら演奏する。
 曲の流れの中で,メロディーを受け持っている楽器が聞こえるように,バランスを取りながら合奏します。
(6)バランスを考えながら全曲を通して演奏する。
 本時の成果を踏まえて,全曲を演奏します。



すてきな音に出会い,共有できる喜び
聞き手 朝比奈幸次郎(東京都府中市立第九小学校教諭)


■リコーダーへのこだわり


朝比奈:今日の授業は6年生の器楽合奏だったんだけど,千田さんは,リコーダー以外の楽器を使った器楽合奏を,実は6年生になるまで全くやらないんだよね。まずそのあたりから,話を始めましょうか。

千田:
そう,3〜5年まで器楽はほとんどリコーダーだけなんです。というのは,リコーダーが子どもにとって手馴れた楽器,基準になる楽器になってほしいと考えているんでね。それで3年,4年とやって運指がだいたい分かったら,5年生では「表現する」「表情豊かに吹く」というところまでもっていきたいと思っているんですよ。表情豊かに吹いて,音楽を知る,音楽を楽しむ,ということをさせたいと。

朝比奈:
ところでリコーダーのパートには高いAの音が出てくるよね。

千田:
そこはね,子どもに近づいていって実演しました。裏の穴のあけ方,コツというかね。「髪の毛一本入るか入らないかの隙間だぞー」って言って。

朝比奈:
やっぱり,リコーダーには力が入るね。どうしてそんなにリコーダーへのこだわりがあるのかな。

千田:
うーん,自分がリコーダーを好きなんだろうね(笑)。息を使う楽器の魅力かな。合唱も好きなのだけれど,リコーダーをより追求したいという思いがある。


■器楽合奏に取り組む意義

朝比奈:
で,今日の6年2組も,こうした器楽合奏はまさにまだ何回目かの経験ということになるんだね。ところで鍵盤ハーモニカだけは5年生に教えているの?

千田:
いや,教えてない。

朝比奈:
過去にも?

千田:
1,2年生では教えるよ。1年生では毎時間必ずやってる。

朝比奈:
かなりなレベルだと思ったよ。で,6年生になったら,リコーダーだけじゃなくて器楽合奏を経験させるというのはどういう意図なんだろう。

千田:
やっぱり,いろいろなタイプの子をリコーダーだけに引き止めてしまうのはいくらなんでも窮屈(笑)。音楽室にはいろいろな楽器があることだし,それらを使って楽しみたい。合奏はリコーダーより大きな音だし,やっているほうのノリもいいしワクワクするからね。リコーダーを吹きに休み時間音楽室に来る子もいるけれど,合奏の場合,上手にできる子ができるところを練習しに来るというおもしろい現象がある。特にドラムやパーカッションは人気だね。

朝比奈:
この授業に入る前の昼休みも,そうだったね。

千田:
それから合奏の場合,練習の後片付けなど煩雑で大変でしょう。合奏するということの中には,楽器の使い方だけでなく,いろんな仕事がくっついてくるんだということに気づかせたいよね。例えば体育館に大太鼓を運ぶときでも,リコーダーの子が,それは自分の楽器じゃないから手伝わない,なんていう関係じゃ絶対ダメだと思ってる。準備や片付けにもやりがいや喜びをもてて初めて音楽がよくなる気がする。

朝比奈:
楽器を大事にすることとかね。

千田:
そうそう。そういう意味で6年生になって「いよいよやれるぞ」という喜びとともに,そういう意識ももたせたい,ということだね。

朝比奈:
合奏することによって,音楽的にはどんな経験をしてほしい?

千田:
まずは楽しんでほしいんだけど,その楽しみは「メロディーが吹けた」というだけのものではなくて,音楽のいろんな要素に囲まれながら音楽を楽しむということだよね。要素とはメロディー,ハーモニー,対旋律,合いの手,リズム,ベース,などを指すわけだけど。メロディー以外のパートを経験して,自分がいろんな要素になることによって,鑑賞や合唱,リコーダーの学習とは違った角度からダイレクトに音楽に触れてほしいと思う。


■『いい音』で吹かせたい

朝比奈:
ところで,今日の授業では合奏のサウンド全体がとても美しいものだったんだけれど,5年生までのリコーダー指導ではどんな点を心がけているの?

千田:
連合音楽会には毎年5年生が参加し,リコーダー合奏をしています。そこでの発表が一つのまとめになると考えて,そこに向けて練習をしていくんだけど,普通,「一生懸命やろうね」というと,子どもたちは,歌なら「大きな声で歌う」,リコーダーなら「間違えないで吹く」,なんてことを考えるよね。だから僕は本番前に「自分が出せるいちばんいい音で吹きなさい」と子どもたちに言うようにしている。

朝比奈:
「いい音」というと?

千田:
つまりリコーダーの場合,ちょうどいい息の強さで吹くということだね。それを普段から子どもが判断できるように気を付けているんだ。低い音は音がひっくり返るからすぐそれがわかるけど,中・高音域は吹きすぎていないか,乱暴な音になっていないか,ということに注意させないとね。ただ吹いているんじゃなくて,音色に気を付けて息をコントロールしているという感じかな。

朝比奈:
それと低音域のタンギングも,柔らかくコントロールしないとね。その他に特に工夫しているというポイントは?

千田:
そうだね,僕の場合,ほとんどピアノ伴奏のある教材を使っているから伴奏のアレンジのよさも大切なんだけど,でもまずはメロディーの質の高さが重要だよね。子どもが毎時間吹くんだもの。それと,伴奏の音にも敏感に反応させたいので「よくピアノを聴いて」と言っている。言ってる手前,こちらもきちんと表情豊かに弾けるようにしないとね(笑)。


■全体から部分へ

朝比奈:今日の授業までの合奏指導の取り組みは?

千田:
6年生の1学期に「パフ」を使って合奏の導入をする。ここで子どもには「パフ」を合奏するというよりは,練習の進め方や楽器の決め方,準備や後片付けの仕方などといったことを,この教材を通して3時間で教えるわけ。2学期は今の「美女と野獣」に取り組んだんだけど,やっぱり,一つのパートや楽器について説明したり面倒を見てあげる時間は少ないので,「デモ演奏音源を聴く→私の説明を聞く→自力練習→パート練習→他の楽器とのアンサンブル練習→全体練習」という手順を通して,曲の部分部分がまだらに完成していく感じかな。

朝比奈:
まず聴くことから入るんだ。

千田:
楽譜を渡す,聴く。聴き終わったらいきなり「さあ挑戦してみよう」。こんなことから始まる。楽譜には小節番号が書いてあるから,はじめはこちらで番号を言いながら指揮をして,とにかくなるべく早めに全員合奏までもっていく。当然子どもたちは分からなくなってしまったり,途中であきらめてしまったりするのだけれど,一人でも音を出し続けていたらストップしない。

朝比奈:
なるほど。

千田:
何回か繰り返していくと,この辺はやりやすいからとか,Cの部分だけ最初に完成したりとか,エンディングのカッコいいところのバンッというところができたりというように進んでいく。

朝比奈:
まず全体を通すことを大切にしているんだ。全体から部分へというわけだね。

千田:
ポイントがはっきりしてくると,何回目かにみんながピタっといったときに「おおっ!」って子どもたちが納得してくるね。分かりやすくて達成感のあるところから追い込んでいくと他にもいい影響がでてくる。あと,音源を聴かせるときは,慣れてきたら目だけで楽譜を追わせるのではなく,音を出さないで指使いの練習を心がけさせたり。

朝比奈:
イメージトレーニングだね。

千田:
「シャドーボクシング」なんて子どもには言って練習させるんだけど,もっといい言葉はないかな(笑)。


■子どもの積極性を引き出す

朝比奈:
授業を見て感じたんだけど,子どもたちがすごく積極的だなと。

千田:
実はそのために,伝えればいいことをわざと子どもに聞くんだ。例えば「あれっ,この前どこやったんだっけな?」とかね。ちょっと言いたいことを質問の形にして出すと,子どもは「まったく先生は!」という調子で,積極的に応じてくる。それから,やはり授業は生き物だから,子どもたちが疲れているか,ノッているかということには,それぞれ柔軟に対応していきたいね。音楽を新鮮な気持ちでやることはとても大切だと思う。「じゃ,30秒だけ休憩」と言
うことで,ぐっと流れが変わったりすることがあるからね。


■選曲と編曲

朝比奈:
千田さんは自分で編曲したものを扱うことがあると思うけど,教材とするものの選び方についてはどう?

千田:
表現の幅を広げるためにも,バラエティー豊かな選曲を心がけたいね。あるタイプの曲に偏らないというか。アニメの曲は子どもたちが知っているので取り組みやすいけれども,流行上の魅力ではなく,メロディーの美しさ,ハーモニーの進行のよさといった音楽上の骨格がしっかりしている点をまず優先したいと思う。

朝比奈:
我々教員が編曲する際のアドヴァイスなどは?

千田:
まずリコーダーの音域や運指に合わせて調を決めること。メロディーのリズムが複雑なときは少し整理する。そのメロディーベースとハーモニーと簡単なリズムを加えれば,一応合奏の形になりますね。

朝比奈:
最後になってしまったんだけど,今日の授業は,とにかく子どもたちの表情がすごくよかったね。みんなが合奏の素晴らしさを感じている顔だった。感動を共感,共有するという点で,合奏は非常にストレートな分野だと思うのだけれど,これからの実情においては課題もあるよね。その辺はどうとらえてる?

千田:
練習のハードルを越えた充実感は顔に出るよね。ただ,やはりこれからは時間をあまりかけないでできるような教材,しかも高学年でも取り組みがいがあって,聴きごたえのある教材。そんな教材がほしいね。もちろん自分でも作っていきたいと思ってるけど。それから合奏が動機付けになって,歌うことや聴くことへも,子ども達がさらに興味をもって取り組めるようになってくれたらうれしいね。そのためには,授業の方法や指導計画に対しての研究も改めてしていきたいなと思ってます。

朝比奈:
ぜひ一緒に考えていきたいね。


●千田鉄男(ちだ・てつお)
東京都東大和市立第十小学校教諭。羽村市青少年吹奏楽団指揮者。編著書『器楽合奏ベストコレクション1〜3』(教育研究社)など多数。子どものための歌も多く手がけている。
●朝比奈幸次郎(あさひな・こうじろう)
東京都府中市立第九小学校教諭。リコーダーアンサンブル「コンチェルティーノ タマーニ」に千田氏とともに参加している。


音楽教育 ヴァン Vol.1(2003年3月発行)より



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